【報告】高校生模擬裁判inメタバース法廷

2025.03.21 メタバース法廷において高校生「文学模擬裁判」
〜「文学模擬裁判に意義あり!」東京新聞で大きく取り上げられました。〜
札埜和男教授(龍谷大学文学部)の指導の下、刑事司法未来「メタバース法廷」において高校生模擬裁判が開催されました。札埜さんは元京都教育大学附属高校の先生。でも、公民の先生ではありません。国語科の授業の一環で「刑事裁判」という学習場面に注目し、参加型授業「文学模擬裁判」を広めてきました。今回は、リアル法廷ではなく、アバターになった高校生たちが仮想空間で丁々発止と裁判劇を繰り広げるメタバース法廷です。対戦相手は、東西の雄「中央大学附属杉並高校(中杉)」と「神戸女学院高校(女学院)」です。対戦の模様は東京新聞でも取り上げられました。
メタバース法廷 高校生「文学模擬裁判」交流戦(2025年3月21日実施)
一般社団法人刑事司法未来と株式会社TKCが共同開発したバーチャル空間でアバターになって訴訟劇を演ずる「メタバース法廷」において、芥川龍之介『羅生門』を題材に「文学模擬裁判」が行われました。女学院が検察側、中杉が弁護側です。3年前の3月、東京飯田橋のTKCのリアル模擬法廷で行われた日本一決定戦の再戦でした。新しい試みでしたが、さすがSNS世代の高校生たち。呑み込みも早くバーチャル空間を楽しんでいました。
(感想) 一方で、「初めてメタバースというものを使い、すごく新鮮な感覚で面白かったです。また、オンライン上であったとしても、衣装を変えたり実際に動くことが出来たりすることで、対面で裁判をしているかのような気持ちになることが出来ました」。ほかにも、「臨場感がある」「実際の視点を味わえる」「同じチームの中での連携が取りやすい」「声だけだからこそ、尋問や質問での対話に集中できる」「異議や質問がより本当の裁判に近くなっていると感じた」「被告人をみんなで守るという意識やチーム一丸となってやっている意識が対面模擬裁判よりも強くなっていた」など肯定的な評価が大勢でした。
しかし、他方で「マイクや操作などのトラブルが起きると裁判の流れが途切れることがある」「パソコンが苦手な人は操作に苦戦して焦ってしまう」「証人や被告人の感情を表現することが難しい」などの声もありました。今後、バージョンアップの際の技術的課題です。
(対戦相手へのコメント) 文学模擬裁判での実績を誇る両校が日本初のメタバース模擬裁判の先駆者となりました。今回の対戦は双方ともに意義深い対戦になったようです。お互いの対戦相手に対する評価。「神戸女学院さんの『証人』の設定はよく作り込まれていて、素晴らしいなと感じた」(中杉)。「ずっと夢見ていた『羅生門』の教材で、念願の中杉さんとの対戦を果たすことができ、とても楽しかった」(女学院)。好敵手であるからこその相手へのリスペクトです。
ちなみに検察官の懲役6年の求刑に対し、合議体の判決は「懲役3年。執行猶予5年」になりました。
(札埜)
リアル法廷 高校生「文学模擬裁判」in Kyoto(2025年3月31日実施)
(龍谷大学深草学舎至心館1階 矯正・保護総合センター、後援:刑事司法未来、刑事弁護オアシス)
〜模擬裁判はリアルでも行っています。〜
『羅生門』を題材とした第5回オンライン高校生文学模擬裁判選手権(2025年2月2日)で同点3位だった神奈川の「森村学園高等部(森村)」と岡山の「創志学園高校(創志)」が龍谷大学矯正・保護総合センター法廷教室(深草・至心館)で直接対決しました。オンライン法廷ではなかった裁判長(伊東隆一弁護士、京都弁護士会)と2人の陪席(高校生)から補充質問も行われました。高校生模擬裁判の卒業生で法学部生に2人(草場琶琴さん・松本國雄さん)もスタッフとして参加してくれました。
前日から入洛し、羅生門ゆかりの地を巡ってイメージを膨らませて臨んだ森村学。直前まで入念に準備し、早朝岡山を立って入洛した創志学園。対面の試合に戸惑ったり、裁判官の質問に「アツ(圧)」を感じたりの場面もありましたが、森村の演技力。創志のプレゼン力。それぞれの持ち味を活かした対戦となりました。MVPには森村の玉木愛さん(主尋問・論告担当)、創志の松山那奈子さん(被告人担当)が選ばれました。関西在住の卒業生や模擬裁判卒業生も応援に駆け付け、温かい眼差しに包まれた中での交流戦となりました。
対戦後、昼食を摂りながらの交流会では、技術的なことだけでなく、文学模擬裁判のテーマである「人間」について熱く語り合いました。「自分の欲のための悪事と、生きるため(命の懸った)悪事では同じ悪事でも異なるのではないか」、「犯罪者を生み出す社会に問題、といった言い方をするが、それは収まりが良くなるマジックワード。果たしてそういうことで本当に問題は解決するのか。被害者の思いはどうなるのか」など・・。なかなか答えが導き出せない深い議論になりました。
【刑事司法未来から】
みなさんも、札埜和男著『文学模擬裁判のつくりかた―国語科と公民科をつなぐ。』(清水書院、2025年)定価1,760円(本体1,600円)を読んで、模擬裁判をやってみませんか。一般社団法人刑事司法未来では、模擬裁判を使った法教育のお手伝いをしています。ご連絡をお待ちしています。(石塚)
メール:info@cjf.jp
【参考】 『東京新聞』2025年4月7日(月)朝刊 https://www.tokyo-np.co.jp/article/396722