【急告】「大麻使用罪新設に反対し、慎重審議を求める研究者の声明」をアップします。

今、「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律案」が国会で審議されています。この法律案には、①大麻の使用罪の創設、②医療用大麻の一部合法化および③大麻栽培免許制度の見直しなどが盛り込まれています。
すべての内容が私たち1人ひとりに関わるものですが、特に①の新しい犯罪を作ろうとする法律には、大きな問題があると考えています。例えば、必要のない犯罪を作ることで、「犯罪者」として扱われる人が増えることです。今の時代、一度インターネットに出た情報は消すことができずに残り続け、差別と偏見を作ります。
新しい犯罪を作るということは、とても重大なことですが、この法律案は、市民の意見を聞いているわけでもなく、国会議員が議論をして作られているわけでもなく、十分に検討されていません。
わたしたち刑事司法未来は、大麻を取り巻く薬物政策の転換に対して、2年前から真剣に取組み、「大麻ティーチイン」を連続開催し、『大麻使用は犯罪か? 〜大麻政策とダイバーシティ』(石塚伸一 =加藤武士 =長吉秀夫 =正高佑志=松本俊彦 編著、現代人文社、2022年)を出版しました。今回の法律案についても、「大麻ティーチイン・パート2」を開催し、情報の提供と問題の重要性を呼びかけています。
みなさんも、大麻政策の大転換に関心を持ってください。「良識の府」参議院の審議に注目してください。

今の状況に危機感を持った刑事法研究者有志が、国会における慎重な審議と国民的議論の喚起を求め、声明を発表されています。資料として、その声明「大麻使用罪(施用罪)の新設に慎重な審議を求める刑事法学研究者の声明」(2023年11月27日)を本ホームページにアップします。

2023年11月28日
一般社団法人刑事司法未来

【声明文の骨子】
はじめに
わたくしたち刑事法学研究者は、拙速な審議は、民主主義の根幹を揺るがすものであり、将来の法執行に禍根を残すものと深く憂慮している。「良識の府」たる参議院においては、広く国民の意見を聞き、刑事法学の専門家や実務家の意見を聴取し、慎重に審議することを求める。

【要望1】参議院においては、厚生労働委員会だけでなく、法務委員会においても法案を検討し、慎重かつ真摯に審議すること
【要望2】増加しているとされる大麻関連犯罪の取締まり状況を調査し、捜査訴追機関の人権の侵害が発生してないかを精査すること
【要望3】審議に際しては、薬物政策に関する国際的潮流を踏まえ、エビデンス(科学的証拠)に基づく議論により、犯罪化・重罰化の可否を決定すること
【要望4】薬物関連犯罪の規制を強化するのであれば、捜査訴追機関が「国民の権利を不当に侵害しないこと」および「法の本来の目的を逸脱して権限を
濫用しないこと」を確認する権限濫用予防条項を設けること

理 由
1 法案提出に至る経緯
2 法改正の骨子
(1) 4つの目的
(2) 改正法案の概要
(3) 刑事法関連規定
3 法案の問題点
(1)何故、2つの法律改正が「抱き合わせ」なのか?
〜大麻使用罪の新設は、法務委員会で審議検討すべきである。〜
(2)「若者」の大麻濫用は増えているのか?
〜「暗数」の多い大麻使用の実態把握は、極めて困難である。〜
(3)大麻規制の非犯罪化・非刑罰化は、国際的潮流ではないか?
〜国際社会は、大麻の自己使用を非犯罪化している。〜
4 日本の薬物政策
(1)厳罰主義か?それとも、回復支援か?
〜この20年、専門家たちは、薬物政策の改革を進めてきた。〜
(2)大麻使用法の「処罰の間隙」は、使用を増やしているのか?
〜大麻取締りの実務に支障は生じていない。〜
(3)「若者」に大麻使用、蔓延しているのか?
〜取締りの強化は、認知件数を増加させる。〜
(4) 大麻使用者というスティグマは、人生にどのような影響を与えるのか?
〜デジタル・タトゥーは、一生消えない。〜
(5)日本にもレイシャル・プロファイリングがあるのか?
〜日本でも、差別的な法執行(捜査や取締り)がおこなわれている。〜
(6)麻薬特例法の拡大適用が行われているのではないか?
〜いわゆる「物なし事件」において捜査権・訴追権が濫用されている。〜

結 論
以上の理由から、わたくしたち刑法学研究者有志は、参議院においては、衆議院におけるような拙速な審議を繰り返すことなく、二院制の本意に立ち返り、「良識の府」としての慎重な審議を求める。
以上
【声明本文】リンク
参議院議長宛_声明文_大麻使用罪に反対する刑事法研究者の声明文(確定版)

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