【緊急報告会】大麻政策の最前線に情報を発信してきたティーチイン・実施レポート

大転換・タイの薬物政策〜厳罰主義から合法化へ〜

 2022年6月11日(土)、龍谷大学ATA-net研究センター【緊急報告会】大麻政策の最前線に情報を発信してきたティーチイン 「大転換・タイの薬物政策〜厳罰主義から合法化へ〜」を龍谷大学深草キャンパスよりライブ配信し、約120名が参加しました。(共催:龍谷大学 犯罪学研究センター/企画運営:一般社団法人刑事司法未来
【>>プレスリリース】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-10613.html
【>>イベント情報】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-10565.html

石塚伸一 氏( 龍谷大学法学部・教授)、加藤武士 氏(木津川ダルク代表・ 龍谷大学嘱託研究員)、舟越美夏 氏(ジャーナリスト・龍谷大学嘱託研究員) 、丸山泰弘 氏(立正大学法学部・教授)、吉田緑 氏(日本比較法研究所(中央大学)嘱託研究所員・龍谷大学嘱託研究員)が登壇し、「わたしたちは見た。タイ薬物政策の大転換〜大麻を効果的に使う社会ができるとき〜」というテーマのもと、タイ渡航での調査でどのような場所に行き、何を見聞きしたのかについて、報告をしました。

 まず、吉田氏より、本調査研究は、日本学術振興会二国間交流事業共同研究・セミナー「麻酔薬物をめぐる政策、法律および法執行に関する比較研究:タイと日本の国際比較」の事業として、実施されるものであり、2022年4月30日から5月7日まで登壇者5名がタイへ渡航し、おこなった     調査について報告がありました。タイ国内では、ボタンを押すと、カップに好きな飲み物が注がれるタイプの自販機がさまざまな場所にあり、その自販機ではHOT CANNABISを選ぶことができたり、お茶や歯磨き粉、アイスクリームなど、大麻を使用した製品が販売されていたりと大麻が生活に溶け込んでいるといった内容でした。
次に丸山氏より、「タイの2021年薬物新法典」についてタイの麻薬統制局で聞いた話を中心に報告がありました。2021年に各薬物関連法が麻薬法典に改められ、麻薬使用者に薬物使用者のレッテルを貼るのではなく更生に導こうという国際社会の動向に沿った政策に切り替えられた。これまでタイでは有害薬物を1(危険度高)から5(危険度低)の5種に分類し、大麻は5種に分類されていたが2022年6月9日の麻薬法典施行によって5種から外れた。この様にタイでは薬物使用に対する刑罰化について国際社会の情勢に順応しようとしているが、タイでの制度は、ハーム・リダクションといえるかは微妙であるなどといった報告がありました。

続いて、登壇者らが、タイでの調査研究について振り返りました。
加藤氏より、「タイの政策は動きが早いという印象であった。数年前にも、タイの医療大麻専門クリニックで医療用大麻の話を伺ったことがあり、その時も驚いたが、今回の調査では、大麻に限らず、さまざまな薬物に対する政策がハーム・リダクションの方向に動いており、世界の大きな流れを感じた。日本においても自己使用については寛大に対処すべきではないかと感じた。」と述べられました。
次に、吉田氏より、「非犯罪化の背景に何があるかということを考えた時に、     タイでは薬物に対する忌避     感情が薄いと感じた。タイでは、大麻を使用して体調が改善することをポジティブにとらえるなど、大麻に対してネガティブな感情を持っていないことが印象的だった。」と述べられました。
続いて、舟越氏より、「2000年代にインドシナ半島の各地で取材をしていた時に、ハーブや大麻が人々の生活に自然に溶け込んでいるのを感じたが、だんだんと世界情勢の影響をうけて、危険視される様になってきたことをきっかけに興味を持つ様になった。今回の調査研究では、タイの国内にも、大麻の使用について消極的な方もいたこと、もともと戦争とドラッグにも興味があったりしたので今回はその様なことにも関連させながら調査を行えたのがよかった。」と述べられました。
そして、石塚氏より、「1995年に、薬物の問題に関わる様になった。5年前にタイを訪問した際も最先端の治療を目の当たりにした。しかし、当時タイでは薬物使用者の刑務所収容者で過剰収容となっていた。今回の法改正で、薬物使用者の収容をやめて教育に切り替えたことは画期的である。日本ではこれまで処罰されてこなかった大麻使用者を処罰してこなかったが、処罰しようとしている。この法改正は不自由な社会を創設する。今回の調査は自由な社会を作ろうということが一つテーマであった。」と述べられました。

その後、視聴者から質問や意見を受け付け質疑応答の時間が設けられました。
最後に、司会の丸山氏より「私たちのチームはこれからも引き続き勉強を続けていきたい。今回タイでの調査を経て、タイの今回の政策(各家庭に大麻を配布したり、大麻を使用できる場所を定めたりすること)は、日本が進めている医療用大麻は使用していいがそれ以外の使用は処罰するという政策には限界があったと示してくれたと感じている。医療用大麻を手に入れるハードルが高くなれば、いくらゲートを開いても末端で必要としている人の手には届かない。そうなると違法なルートで手に入れるしかなくなるということをタイの政策は示してくれたのではないか。そういったことを念頭に、日本においても社会学者・政策学者らは考えていかなければならないのではないか。」と研究会を締めくくりました。
なお、本調査研究報告は、龍谷大学 矯正・保護総合センター「研究年報」に寄稿の予定です。

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